コンクールは、ピアニストにとって自分の力を試す舞台のひとつです。
同じ条件の中で演奏し、審査を受け、結果として順位がつく。
ときに厳しい世界ですが、そこには多くの学びや出会いがあります。
けれども、音楽というものは本来、人と比べるためのものではありません。
「うまい」「すごい」といった評価では語りきれない深さがあります。
審査する人や時代の流れによって、結果が変わることもあります。
だから、コンクールの結果がすべてではないのです。
それでも、コンクールに挑戦する人たちは皆、強い覚悟を持っています。
人前で演奏し、評価され、ときには厳しい言葉を受けることもある。
それでも舞台に立つのは、自分の音楽を信じているからです。
そんな姿に、私たちはただ敬意を持って見つめるしかありません。
コンクールに出る以上、誰もが勝ちたいと願っています。
それは、自分の音楽を多くの人に知ってもらい、
ピアニストとしての道を切り開くための大切な一歩です。
しかし、コンクールに出ない素晴らしいピアニストもたくさんいます。
受賞歴がなくても、世界で愛されている人たちがいます。
彼らは競争ではなく、自分のペースで音楽を育ててきた人たちです。
その生き方もまた、とても美しく、尊いものです。
コンクールに出るか出ないか――どちらが正しいということはありません。
大切なのは、自分の信じる音をどう育てていくか、ということ。
音楽の世界には、たくさんの道があり、どの道にも光があります。
そして、聴衆たちがすべての音楽家を支え、育てる社会になればいいなと、心から思います。